Precious Heart


 よく人間を宝石に例えて『あなたはまだ原石だから磨けば光る宝石になる』などという表現を使う。切瑳琢磨という言葉も同じような意味を持つ。
 では『磨く』という事は、どういう事をさすのか?それは微細な傷をつけ合う事である。磨かれる原石も磨くのに使われる道具も同じように傷つき、身をすり減らしながら粗い面が、次第に滑沢な面へと変化していく。それが『磨く』という過程である。

Precious Heart  ひとの心が宝石の原石ならば、それを磨いていくのもまた人間との関わりではないだろうか?小さな原石ならば磨かれる過程で小さくなり過ぎて、その輝きも見えなくなってしまうかもしれないし、大きな原石であっても結晶の中に沢山の気泡を抱え込んだものならば、いくら磨いても輝くことはできない。ゆっくりと、しかし確実に原石の結晶を育て、それを何度も何度も磨く事によって本当の宝石としての輝きが得られるのである。
 今までの自分自身を振り返ってみると、複雑な人間関係の中で、傷つき悩んだ事が何度もあった。しかし、その度に自分の中で脹らみ続ける何かの存在も自覚しながら、まだまだ自分らしさを発見できずに迷っていた。
 それはきっと心の結晶を育てている段階なのだろう...と、最近思うようになった。やがて本格的にそれを磨く時期が訪れるのを感じながら、心の奥深くには、どんなものと触れ合っても決して傷つく事の無い、小さいけれど硬い芯のようなものが存在しているのに気づいた。
 表面的なつき合いならば、人は傷つくことは無い。それはただ表面を撫でているようなものだ。磨かれるためには、お互いの心をぶつけ合って小さな傷をつけ合い、時には涙で洗い流すことも必要なのだ。その事実を知ってから、私は自分自身をさらけ出す事を恐れなくなった。もっと沢山の人々と偽りの無い心で接して何かを感じ取っていきたいと思うようになった。
 けれども私は強くないから、時には落ち込み、自信を失う事もある。それでも全ての経験は、心に何かを残していくものなのだ。そして、それらが私に勇気を与えてくれたり、優しさの意味を教えてくれている。




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